腕や手指の症状
 ここでは、肩の関節を含む腕や手指の症状に関係する症状について説明します。
肩の関節の症状

五十肩(肩関節周囲炎)―肩の関節が痛い―

五十肩の人

肩が痛くて上がらない、夜も痛くて目がさめる。五十肩はとても辛い症状です。正式には肩関節周囲炎といいます。注意してほしいことから書きます。世間では「五十肩はほっといても勝手に治るよ」という噂が 流れています。これは間違いです。確かにほっといても痛みが消えていく場合(炎症が自然に消退する)があります。ところがこれは治っているわけではありません。痛みを発した悪い部分はそのまま残っていて、痛みを発するのをやめただけです。だから、また、些細なことで炎症が再び起こり痛みを発し始めます。実のところ私たちもみなさんそれぞれの五十肩がほっといて痛みがましになるのか炎症がひどくなるのかは見分けがつかないのです。そしてほっといても治らない場合症状がきつくなっていくことが多く肩関節の可動域が減って髪の毛をといたり、シャツを着たりという基本的な動作が痛くてできなくなったり、夜中に疼いて目が覚めてしまうということまで起こってき ます。私たちのところには長くほっといてこじれた五十肩の患者さんがよく来られますが、とても辛そうですし、治療が長引くことも少なくありません。なので、”勝手に治る”を期待せずに早めに治療を始めましょう。初期ならばかなりスピーディーに解決できます。五十肩と一口に言ってもいろんなパターンがあります。あなたは下のどのタイプ?

五十肩 痛みのタイプ

どうですか、たくさんのタイプがあるでしょ。そしてその痛みの発信源の場所も人それぞれ違います。上記タイプから痛みの発信源を大まかですが絞り込むことができます。あとは実際に皆さんの肩を検査したり触れたりして探していきます。発症から時間の経った人は複合タイプが多いです。またまれに触れただけで痛いタイプは石灰(カルシウム)沈着していることがあります。レントゲンで見ると肩の筋肉の中に骨のようなものができているのです。これは強い炎症の末にできてしまったもので非常に痛いです。こうなってしまっても丁寧に治療して周りの血のめぐりをよくして炎症が退きやすい環境を作ってあげるとカルシウムも吸収され治っていきます。もう一つだけ注意してほしいことを書きます。「痛い肩を動かしていいのか」という質問をよく受けます。この答えは二通りです

  1 急性期でズキズキ疼いている時
    無理に動かさないようにしましょう

  2 ズキズキはしてないが動かすと痛い時
    積極的に動かしましょう(ただし次のことを守ってください)

関節は動かさずにいるとだんだん硬くなって動かなくなっていきます。それを 防止しなくてはいけません 絶対安静は禁止です。ただし無理をするとズキズキしてしまいますので次のことは守ってください。フリーで動かすこと(重量物を持ち上げたり、負荷をかけたりしない) 動かす限界(痛っ!っとなるギリギリ手前)までの範囲にする

細かなことはその都度こちらでアドバイスしますのでなんでも聞いてくださいね

肘の症状

「肘が痛い」という症状には肘の外側が痛むもの、内側が痛むもの、後ろ側が痛むものなどがあります。各症状について説明します。

上腕骨外側上顆炎(バックハンドテニス肘)

テニス中に肘が痛んでいる人

上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)は肘の筋肉の使い過ぎによっておこるスポーツ障害のひとつです。テニスのバックハンドストロークのように肘を曲げた状態から伸ばす動きを繰り返した場合に起こります。また、テニスに限らずゴルフや剣道など強く握る動作によっても起こります。スポーツ以外ではパソコンのキーボードの入力作業や、マウスを繰り返し操作する動作によって起こることがあります。肘の外側にある骨の出っ張り(上腕骨外側上顆)から前腕にかけて、物をつかんで持ち上げたりタオルを絞るときなどに痛むのが特徴です。傷めた程度によりわずかな痛みから激しい痛みまで感じる場合がありますが、じっとしているときよりも動かしたり力を入れたときに痛むことが多いですね。なお、使い過ぎではなく体勢が崩れた状態で腕の力だけでテニスのバックハンドを打った場合のように一度のプレーにより負傷することもあります

上腕骨外側上顆炎になりやすい作業

原因は、手首を反らす働きをする筋肉(主に短橈側手根伸筋)を反復して使い、その筋肉の骨への付け根の部分の腱に負担がかかり傷めた状態になっていることです。二の腕にある上腕骨に外側上顆という出っ張りがあり、この部分は主に手首を反らす働きをする筋肉がくっついている場所です。この場所を傷めることが多いのですが、実際にはくっついている場所そのものよりも1~2cm先のあたりが最も痛むことが多く、そこから前腕の真ん中あたりまで痛みが引っ張ることがあります。痛みを我慢して運動やトレーニングを続けていると、負担がかかり硬くなった筋肉の腱に微細な断裂が起こり修復が間に合わず硬く柔軟性がなく肥厚した組織に置き換わります。そうなると使ったときに痛みが生じやすく、運動を続ける上で支障が出ることがあります。

上腕骨外側上顆炎に関係する筋肉

前腕後側の筋肉

外側上顆炎を治すためには上腕骨外側上顆付近の傷めた腱組織の回復をはかるとともに、そこにつながる前腕の筋肉の緊張をとり柔らかい状態にもっていきます。患部の痛みが強い場合は休養あるいは運動の強度を落とすことも検討したほうがよいでしょう。重症の場合は最初は触ることも痛いですが、患部を丁寧に加療し組織の修復が進むと痛みも楽になります。なお、テニス肘の負荷を軽減させるサポーターは患部ではなく、それよりも数cm先の前腕の部分に少し強めで装着すると良いでしょう。

上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘、フォアハンドテニス肘)

肘が痛んでいる人

上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)は肘の筋肉の使い過ぎによって肘の内側が痛くなるスポーツ障害です。ゴルフのスイングやテニスのフォアハンドストローク、野球の投球のように肘の内側の筋肉を使う動作を繰り返す場合に起こります。言い換えるならば抵抗のかかる状態で手首を何度も手のひら側に曲げるような動きです。家事や仕事などでも起こることがあります。肘の内側に痛みが出るのが特徴です。安静にしているときよりも、腕を使ったときに痛みます。肘の内側の骨の出っ張り(上腕骨内側上顆)の付近を押さえると痛みがあります。なお、野球肘および成長期のリトルリーグ肘は別項目で解説します。

上腕骨内側上顆炎に関係する筋肉

この上腕骨内側上顆という場所は指や手首を曲げる筋肉(橈側手根屈筋、浅指屈筋、尺側手根屈筋、長掌筋)と肘を内側にひねる筋肉(円回内筋)の付け根になっている部分です。手を繰り返し使うことにより付け根の部分に負担がかかり、微小な損傷を繰り返します。痛みを我慢して継続して運動を続けていると筋と骨を繋いでいる腱線維の修復が間に合わず硬く柔軟性がない肥厚した組織(線維化、瘢痕化)に置き換わり痛みが慢性化することがあります。肘の内側に生じた線維化組織は、隣接する尺骨神経(肘の内側をぶつけるとビリッと走る部分)を締めつけてしびれや違和感のもとになることもあります。

上ゴルフのスイング

この故障を治すために骨の出っ張りについている多くの筋肉の中で特に傷めている筋肉を探し出します。ゴルフやテニスのスイングなど手首を曲げる動作で傷めている場合は橈側手根屈筋と円回内筋に問題があることが多いです。傷めている筋肉がみつかればその付け根の損傷部の回復をはかります。筋肉を使いすぎて疲労し硬くなっている場合は、患部の回復に悪い影響を及ぼしますので筋肉の余分な緊張を取り除きます。また、二の腕や肩の緊張をやわらげることが効果がある場合があります。治りが悪い場合はゴルフで片手打ちになって肘に無理な負担をかけていないか検討してみてください。

野球肘(成長期のリトルリーグ肘、内側側副靭帯損傷、外側型、後方型など)

投球時の肘へのストレス

野球肘は野球の投球動作の繰り返しが原因で肘を傷めるスポーツ障害です。傷める場所によって内側型、外側型、後方型に分類されますが内側型が最も多いと言われます。症状は投球時の肘の痛みや、肘の曲げ伸ばしが完全にできなくなるなどです。痛みが出始めても我慢して投げることによって段々と痛くなることが多いですが、急に痛みが強くなる場合もありますので注意が必要です。また、リトルリーグ肘とも言われる成長期の野球肘の場合は痛みが出始めた頃には重症化している場合があります。

成長期における野球肘内側型と外側型
成長期における野球肘後方型

成長期の野球肘の原因は、骨の成長線(骨端線)の部分が柔らかく弱くなっている部分に投球動作による刺激が繰り返し加わることです。13~14歳ごろまでに多いのは肘の内側の剥離骨折や骨端線離開といって弱くなっている骨に損傷が起こるものです。これは早めに運動を休止し手当することで元に戻ります。15~16歳ごろになると肘の内側でも少し下のほうの靭帯のついている部分(尺骨の鉤状結節)が弱くなり障害を起こしやすくなります。17歳ごろ以降の成人期は骨は強くなり傷めることがなくなりますが、内側を補強している靭帯(内側側副靭帯)の損傷が起こります。これら内側型の損傷は、投球動作において肘を外側に捻る動作が原因となり内側を引っ張ることから起こります。

反対に、同じ動作の際に肘の外側は圧迫されます。この圧迫が原因となり起こるのが外側型の野球肘です。外側型では上腕骨小頭(じょうわんこつしょうとう)という場所がぶつかり圧迫されて骨端核壊死(こったんかくえし)という状態や、繰り返し損傷し骨の破片が剥がれて離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)という損傷状態を呈します。この外側障害では初期や中期の場合は運動休止と筋肉や靭帯の手当てをすることで対処できますが、長く無理を続けて後期になると骨の破片が剥がれて関節にはまり込むことがあり重症化します。最後に後方型の野球肘の原因は投球動作の際に肘を外側に捻るストレスと伸ばすストレスが繰り返し加わることで肘の後ろを損傷する障害です。内側型と同じく骨端線離解、あるいは骨棘(こつきょく)が出来たり、疲労骨折を起こすこともあります。

いずれの野球肘も初期から中期であれば保存療法で改善が見込めます。内側型、外側型、後方型の部位に応じて筋肉や腱と靭帯の損傷している部分で特に強い痛みのあるところを確認し、緊張をとっていきます。筋肉の柔軟性が回復すれば、患部が悪化することを防ぐことができます。重症の場合は整形外科詳しく調べてもらった上で方法を考える場合もあります。また痛みが強い場合や成長期の野球肘の場合は投球動作をしばらく中止したり、投げる量を制限したりすることも検討したほうが良いこともあります。野球のピッチャーやキャッチャーで投げていて肘の痛みが長く続いている、肘の曲げ伸ばしの角度が狭くなってきたりひっかかりを感じるなどがあれば、我慢せず早めにご相談ください。

投球する少年
手首や指の症状

拇指関節症―親指の付け根が痛い―

何か物をつかんだ時に親指の付け根が痛いという症状で多いのは腱鞘炎ですが、全てはそうとは限りません。腱鞘炎は腱または腱をおさめるさや(腱鞘)の炎症ですが、もう一つこの場所に痛みを発するものに拇指関節症(拇指CM関節症)があります。これは腱や腱鞘の問題ではなく、親指の付け根の骨と手首を構成する小さな骨との間の関節 (下図)に起こる障害です。

拇指関節症の説明

ひどくなると関節部の変形がおこり亜脱臼状態になったりして症状がより強く頑固になってしまいます。よく手を使う人に見られます。

治療は、関節をまたぐ筋肉群の過緊張をとり関節の負担を軽減します。単に筋肉の痛みが関節部に投影されて起こる疑似的なものもあり、その場合はすぐに痛みがとれて治ります。長期に放置してると痛みを回避するために手の使い方を変えてしまい、負担の増えた筋肉は硬くなり、負担の減った筋肉は萎縮しパワーを低下させてしまい、ますますこの関節のバランスが悪くなり変形を助長します。ひどい場合は関節を矯正したり、テーピングなどで固定し、局所の安静をはかります

へバーデン結節―突き指した覚えがないのに指の関節が痛い―

へバーデン結節の指

指の第一関節(指の一番先の関節で遠位指節間関節といいます) が痛い。見るとちょっと腫れている。

これは多くはへバーデン結節と呼ばれる関節炎の一種です。主に上図→の部分が少しずつ痛くなり腫れてきます。そのまま放置すると変形が起こり関節が少し歪みます。変形が完了すると痛みはなくなることが多いですが、指は変形したままとなります。治療は痛みが出てるうちにするのが大事です。変形を防げます。

突き指

突き指

球技でボールに指を突いてしまう、洗い物をしていて勢い余って食器に指をついたり慌てていてドアノブに指を突いたりと体から最も飛び出した部分は受難がいっぱ いです。 突き指で傷めるのは指を動かす筋肉、腱、関節包(関節を包んでる袋)、腱から骨に広がり付着する膜、骨等傷つく可能性のある組織は沢山あります。

治療の常識としては局所の安静が大切なのですが私たちはもう少し積極的に働きかけます。まず、突き指局所は傷の痛みと腫れによる痛みの合わせ技であなたに苦痛を与えています。その時に受傷部位の循環を促す治療を施すと腫れが大幅に退きます。それだけでも腫れによる痛みがなくなりますのでかなり楽になります。

またその状態(循環を高めた状態) は傷部分の修復を早めます。また、傷ついて組織の中に痛みを出す構造ができれば症状は長引いてしまうのですがそんな場所に対しても積極的にアプローチしていくことでさらに治癒を早めるとともに、古傷として残留し続けることを防ぎます。何かと忙しい主婦の方々や長く休むことができない運動部の選手にはもってこいの治療法を用意しています。もし来られる時は「どのようにして指を怪我したか」を教えていただくと受傷部特定が早くなります。