肋間神経痛―背中や脇から胸や腹にかけての痛み―
背中や胸が痛いという症状の一つに肋間神経痛があります。背中(胸髄)から出て胸腹部に分布する肋間神経が何らかの原因で痛むものです。よくみられる症状は体をねじったり深呼吸や咳をしたときに背中が痛む、脇から胸にかけて痛む、などがあります。体の左右片側に出ることが多いです。痛みの特徴は関係する肋間神経に限られた範囲に発作的に痛みが起こります。ひどいと激痛になる場合もあります。頻繁に繰り返しますが一回ずつの痛みの時間は短く、発作と発作の間には痛みを感じない時間があります。
肋間神経痛の原因には病気やけがなど医学的に原因のある続発性肋間神経痛と、原因のない特発性肋間神経痛があります。多く見られるのは原因のないとされる特発性肋間神経痛です。これは神経が筋肉や骨に機械的に圧迫されて起こるもので、筋肉を固くするストレス、寝不足、姿勢、冷えなどの原因があります。また季節の変わり目に起こりやすく、低気圧、高湿度、気温の変化などの影響が重なった場合に起こりやすくなります。それ以外では病気が隠れていることもありますので体の左右両側が痛い、痛みが変化せず長期にわたって続くなどというときは一度病院での検査をお勧めすることがあります。続発性肋間神経痛の原因には肋骨骨折や帯状疱疹、脊髄の腫瘍、脊椎の圧迫骨折、肺や心臓疾患による胸膜炎などがあります。
肋間神経痛の治し方は、まず神経を圧迫している部分を探します。多くは肋間神経が脊椎の間から出てくる部分の背中の筋肉が硬くなり、押さえると痛い部分がありますのでその筋肉を柔らかくします。ハリをうつ方法と揉み解す方法、温める方法がありますがいずれも効果的です。季節の変わり目ごとに繰り返す方は、あらかじめ筋肉を柔らかくしておくことで予防にもなります。自分でできる対策としては体を冷やさない、姿勢に気を付ける、十分な睡眠をとる、軽い体操をするなどがあります。
腰痛―腰が痛い、だるい―
こんな症状ありませんか
①長時間立っていると腰が痛い
②寝て時間がたつと腰が痛い
③腰を曲げたときに痛む
④腰をひねったときに痛む
⑤腰が張ったような感覚がありだるい
このような場合、使いすぎや姿勢の維持により腰の筋肉に疲労がたまって痛みを出していると考えられます。立ち仕事をするときなど同じ姿勢を続けるときには、背骨や骨盤をつなぐ筋肉が適度に収縮して姿位を保っています。長時間になると筋肉も疲労して硬くなり柔軟性が低下します。日常生活で特定の姿勢をすることが多い場合などは特にひどくなりやすいです。反復して同じ動作を繰り返す場合も同じように硬くなります。そのように硬くなり柔軟性が低下した状態の筋肉はやがて使うたびに痛みを出すようになります。
このような原因に加えて、姿勢による圧迫、環境による冷えやむくみ、肥満による腰の負担の増加、運動不足による筋力の低下などが加わることでさらに発症しやすくなります。
症状の解消のためには直接の原因である筋肉の硬さを柔らげる必要があります。一度硬くなった筋肉の中には特に硬いしこりのような部分とその周辺の硬さがあり、しこりの部分を残して表面的に柔らげてもしっかりと解消しなかったり、すぐに元に戻ってしまいます。当院では筋肉の状態を元に戻すために筋や腱の状態を調べて鍼をうち揉み込むなどの方法を行っています。大きな筋肉だけでなく骨と骨をつなぐ小さな筋肉や、筋肉が骨に付く手前の部分まで診ていくことで様々な症状の解消につながります。筋肉中のしこりをとることで基礎的な血流が改善しますので、寝ている最中の腰周りの血流も改善し痛みが出なくなります。
ぎっくり腰(急性腰痛)
・顔を洗おうと前かがみになったときに急に腰が痛くなった
・くしゃみをしたときに腰に痛みが走った
・ものを拾おうと斜めに体をひねったまま腰を曲げたときに痛くなった
・勢いよく重い箱を持ち上げようとしたときに腰に痛みが生じた
・長時間座っていた後に急に立ち上がろうとしたときに腰が痛くなった
上記のように何か動作をしたときに急に腰が痛くなることを一般的にぎっくり腰と言います。急な動作により腰の骨をつなぐ関節や腰の骨と骨盤をつなぐ関節をひねったり、腰を支える筋肉を傷めてしまうことが原因です。顔を洗おうと前かがみになったときやくしゃみをしたときなどのようにいつも行っているささいな動作が直接の原因となることもあります。これは腰周りの関節を支える筋肉が疲労して硬くなっていたために関節が緊張して動作に耐えられない状態であったり、柔軟性の低下した筋肉を直接傷めてしまうことによります。
ぎっくり腰になった場合は生活に差し支えることが多いですから、できるだけ早めの治療をお勧めします。また、しばらく前から腰がだるく感じるなど前兆があることもあるのでぎっくり腰の経験のある方はその時点で予防すると苦しまなくて済む場合もあります。お気軽にご相談ください。
坐骨神経痛
お尻から太ももの裏を通ってふくらはぎから足に至る坐骨神経に沿って痛みやしびれが起こる症状です。何らかの原因で神経が圧迫や締め付けられている場合に起こります。原因は腰やお尻にあることが多く、お尻にある梨状筋が硬くなり神経を圧迫する梨状筋症候群がよく見られます。典型的な神経痛では灼けつくような感覚や、一瞬走る電撃のようなしびれが坐骨神経に沿って起こるのが特徴です。お尻にある中殿筋や小殿筋の悪くなった部分からの関連痛(放散する痛み)として坐骨神経痛と似た症状が出ることも多く、厳密には異なるものの一般的に坐骨神経痛に含められることがあります。
坐骨神経痛の痛みをとるためには、神経を圧迫しているお尻の筋肉(梨状筋)や痛みのもととなっている中殿筋や小殿筋の緊張を緩めて周辺の血行をよくすることが大切です。腰椎周辺に原因がある場合は腰周りの筋肉の緊張を緩めて腰椎が動きやすい環境をつくります。坐骨神経痛の原因として腰椎分離すべり症や椎間板ヘルニアがあると筋肉に対する負担も増え、腰椎も不安定になりやすい傾向がありますが、やはり腰椎を支える筋肉の緊張をしっかりと緩めることで痛みが改善します。別項目で解説しますが、脊柱管狭窄症と診断された方も鍼や揉みこみで手を加えることで痛みが改善することが多いです。お悩みの方は一度ご相談ください。その他の原因としては脊髄や骨の腫瘍や癌の転移などが原因となることがあります。
腰椎椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間にありクッションの役割をしているのが椎間板です。椎間板ヘルニアは何らかの原因で背骨の接続部分に衝撃をうけたり、繰り返して反復する動作、加齢により椎間板が弱っているなどの原因により椎間板を損傷し押し出されたゼラチン状の髄核により神経根が圧迫され症状が出るものです。背骨の可動性が高い頸と腰の椎間板ヘルニアが比較的多くみられますが、特に腰椎部分では体重がかかることによりよく起こります。
坐骨神経痛を生じる原因になる場合があります。レントゲンをとってみて椎間板ヘルニアが映っていても無症状のこともあり、必ず症状が出るわけではありません。また、椎間板ヘルニアが映っていても腰まわりの筋肉の過剰な緊張を緩めることで坐骨神経痛の症状が治ることも比較的多くみられることから、坐骨神経痛の症状が出ているからといって椎間板ヘルニアが関係しているとは限らないようです。
一度押し出された椎間板の髄核は元に戻りませんが、痛みをとることは多くの場合可能ですからお困りの方は是非一度ご相談いただければと思います。
腰部脊柱管狭窄症
背骨の中を走っている脊髄神経の通り道である脊柱管があります。背骨と背骨は多数の靭帯と筋肉により支えられていますが脊柱管狭窄症はこの靭帯が加齢などの原因で硬く肥厚すること、背骨の変形により生じた骨棘、飛び出した椎間板の髄核などにより、脊柱管が細くなり脊髄神経を圧迫し起こります。典型的な症状は「間欠性跛行」です。これは歩いているときに腰やお尻から太ももや脛にかけて重くだるさが強くなり次第に痛みを感じて歩けなくなるものの、しばらく休憩するとまた歩けるようになるというものです。重さだるさや痛みが生じる原因のひとつは血流が悪くなっているためで、休憩すると血行が回復します。また脊柱管の圧迫は腰を前屈すると楽になることが多いので前かがみに座って休憩すると楽になりやすいのです。以前来院された症状の酷い方は数メートル歩くごとに休憩を挟まないと歩けないこともありました。
腰部脊柱管狭窄症の症状は腰やお尻まわりの症状にとどまる軽い場合から、上記の間欠性跛行や神経症状を伴うものまであります。間欠性跛行は血管が閉塞する動脈硬化や血管炎などでも起こることがあるので注意します。その他にはお尻の筋肉が非常に硬い人も血行が悪くなりますのでよく似た症状が出ることがあります。
脊柱管狭窄症の症状改善のためには血流をよくすることと腰周りの筋力低下を防ぎ良い筋肉を保つことの二点が大切です。当院では腰周りの筋肉ひとつひとつをチェックし、丁寧に鍼や揉みこみを行います。腰を支える筋肉の状態が改善し、血流の良い状態が保たれるようになれば症状は徐々に緩和していきます。間欠性跛行の症状も最初は数メートル歩くごとに休憩していたのが、10メートル、20メートルと距離が伸びていくことが最初の目標です。
脊柱管狭窄症は日常的に安静にするよりも動ける範囲で運動をすることが大切です。軽い運動をすることで血流がよくなり、腰周りを支える筋力低下を防ぐことができます。しかし同時に腰を捻る運動や急な動きは痛みを増すことがありますので、前屈運動を中心にゆったりと軽めの運動を続けることが効果的だと考えます。