膝や足など下肢の症状
 ここでは、膝の関節や足首など下肢の症状に関係する症状について説明します。
股関節の症状

変形性股関節症

しゃがむと股関節が痛い、階段で体重がかかった時に痛い、気がつけば開脚時に股関節が痛くてできなくなってる。 等々がある場合ほとんどは股関節をまたいでる筋肉のトラブルです。ところが中には股関節を構成する骨に由来する場合があります。

股関節は"球"と"受け皿"の対で構成される球関節というタイプの関節です。体にいくつかある 球関節のうちかなり安定した支持力のある関節です。

臼蓋形成不全

しかし、もともと関節を構成する骨の形状や発達度合いが悪かったり(臼蓋形成不全)、何らかの病気やトラブ ルでその形が壊されたりすると動きが悪くなったり、炎症を起こしたりします。その結果、関節の隙間が狭くなったり、軟骨が薄くなったり、 関節の形がいびつになったりし、変形してしまいます。もともと体重のかかる関節なので普段から負担が大きく、トラブルが発生すると他の場所(関節周囲の筋肉、腰、膝)への波及 が避けられません。 その場合は局所の負荷を減らしつつ、股関節周囲の筋肉のサポートをしていきます。 長く患っているとそれら周囲の筋肉も悪くなっており、症状を悪い方へ修飾してしまいます。 関節の骨の部分(球や受け皿)そのものの異常を鍼で治すのは難しいですが、そういう方々の持つ痛みは関節構成体の痛みとそれを支え続けて疲労した筋肉の痛みが混在しています。

股関節を動かす筋肉
膝や太ももの症状

関節水腫―膝に水が溜まる―

膝が痛い時 「あれ? ひょっとして 私 膝に水が溜まってる?」って思ったことはないですか? これとても不安ですよね。この膝に水が溜まると言う現象は何かに付随して起こる症状の1つなのです。

それは膝関節症の悪化に伴うものであったり 膝の捻挫などの外傷性の炎症に伴って起ったものであったりします。

膝関節の構造

そもそも関節の中は水で満たされています。その水は関節液と呼ばれて、いつも新しいものが作られては吸収されているのです。

作るのも吸収するのも関節を包む袋(関節包)の内側 の膜(滑膜)です。ここになんらかの炎症が生じると関節液の産生量が吸収量を上回ってしまい水分が過剰になります。そうすると限りある関節包の中のスペースがパンパンになってしまいます。つまり関節内圧が上がってしまうのです。この状態は程度にもよりますが痛いです。 私たちはその炎症を抑え、過剰な関節液の吸収が促されるように治療します。それにより関節内圧は下がり痛みは引いていきます。

ただし、気をつけて欲しいのは冒頭でも書きました通り膝に水がたまるのは何かに付随して起こっています。そこを治療しなければ単なる対症療法にすぎないのです。 外傷の場合は原因ははっきりしていますが、それ以外のですと何が原因かわかりにくいです。多いのは膝の使い痛みによる炎症であったり、膝関節症に由来することもあります。

いっしょに本当の原因を探して根本を治療していきましょう。 もし、自分の膝が腫れてる? 水が溜まってるかな?って思ったらすぐに聞いてくださいね。

膝関節症、変形性膝関節症

関節症とは何らかの原因によって膝関節部に炎症を起こし、痛み(立ち上がる瞬間や歩き始め)や運動障害を起こすものです。そのなかで変形を伴うものを変形性膝関節症と言います。 変形は太ももに対してスネの骨が内側に角度がついてO脚になることが多いです。病院ではこの痛みの原因を次のように説明しています。

膝関節症の説明

軟骨が減ったり棘が出たりそんな事を聞くともう治らないんじゃないかって不安に思いますよね。確かに軟骨がまた盛り返してきたり、棘がなくなったりっていうのは難しいです。

膝変形の説明

でも、諦めるのは早いです。

そもそもあなたの痛みが軟骨や骨の棘とどう関連しているかが注目すべきです。実際に軟骨がすり減って痛みが出てると診断を受けた方でも鍼治療で改善した例はたくさんあります。その場合、なぜ改善したかを考えてみましょう。「鍼治療によって急に軟骨の増殖が始まって治った」っていうのはちょっと考えにくいですね

「痛みの発信源が軟骨や棘ではなく筋肉であった」「関節の周りの筋肉のバランスがよくなり関節そのものにかかる負荷が減った」といったことが最も考えられます。病院で治療を受けて楽になっていない人はぜひご相談ください

オスグッド病-成長期の膝スポーツ障害-

オスグッド病は成長期にスポーツをする場合に生じます。膝のお皿の下にある脛(すね)の骨の出っ張りの部分で炎症を起こし腫れて痛むのが特徴です。11~14歳頃に多く。太ももの大腿四頭筋とその延長上にある膝蓋腱(しつがいけん)が脛骨(けいこつ)の脛骨粗面(けいこつそめん)の軟突起を過度に牽引することが原因です。スポーツによる負荷と、成長期の骨の変化が重なり発症します。16~18歳ごろに骨が固まると一般的に症状は無くなります。痛みのピークは1~2週間ですが、成長期の間はたびたび再発し痛みが生じます。

オスグッド病の説明

成長期にはまず骨の成長が早く起こり、筋肉の成長はやや遅れます。骨の長さに対して筋肉の長さが短いため引っ張られて硬く緊張しやすくなります。更に、太ももの大腿四頭筋が脛の骨に付着するポイントに骨の成長軟骨(骨端線)が生じる時期となり、成長軟骨は成人の骨よりも弱く筋肉の力が加わると損傷しやすい部分となります。ただでさえ成長期に長さが短くて硬くなっている筋肉がスポーツで過度に使われることでより硬く柔軟性の低下した状態となり、柔軟性を失った筋肉の刺激はダイレクトに骨の弱い成長軟骨の部分を傷つけ、炎症を起こします。

オスグッド病の対策として大切なことは、骨につながっている筋肉(大腿四頭筋)と腱(膝蓋靭帯)の疲労を溜めず柔らかい状態を保つことです。また、脛の骨に炎症が生じて痛みが出ているときには早く処置を行い損傷部に負担がかからないようにして修復を促し痛みをとることです。そのためオスグッド病の疑いのある場合は痛みを我慢せずできるだけ早く対策をしましょう。痛みが楽になればスポーツを続けることもできます。うまくスポーツを続けるコツは日ごろから太ももの筋肉の疲労を溜めず、柔らかい状態を保つことが大切です。痛みが治まってもまだ筋肉の損傷や炎症が残っている場合があります。しっかりと治るまで来院してもらうことと、日ごろからストレッチやマッサージなどで筋肉のメンテナンスを行っていくことが効果的です。

膝窩筋の障害―膝の裏が痛い 膝を曲げる時に痛い―

膝の痛みで多いのは「椅子から立つ時にお皿の下が痛い」とか「膝に体重がかかると膝の内側が痛い」というものですが、時々「膝を曲げる時に膝の裏が痛い」と言われる方がいます。 そもそも悪い筋肉は縮むと痛みを出すという特徴があります。膝を曲げる時に縮む筋肉は 太ももの後ろの筋肉群、ふくらはぎの筋肉が主だったものです。 しかし、膝の裏の奥の方に先ほどの筋肉以外の小ぶりな筋肉がいくつかあり、重要な働きをしています。そのうちの一つが膝窩筋です。この筋は膝関節を曲げる時に働きますが、それ以外に重要な役割を持っています。

膝窩筋の図

膝はまっすぐ伸ばしている時スネの骨をほんの少し外旋(つま先が外に向かう回旋運動)してかっちりと膝関節の骨(太ももの骨とスネの骨)を安定させています。 伸ばした膝を曲げるにはスネの安定性を解除しなければなりません。その解除役が膝窩筋 です。この筋の収縮により外旋状態のスネの骨を内旋させて膝を曲げる動作が始まるのです。このような働きから「伸ばした膝を曲げる時に膝裏が痛い」という症状はこの筋を疑うのです。 また、ランニングなどでも傷めることがあり、パフォーマンスの低下や痛みによる走行不能に陥ることもあります。 もちろん「曲げる時に痛い」というのはこの筋だけではありません。一緒に原因を探して治療して行きましょう。

腸脛靭帯炎(腸脛靭帯摩擦症候群、ランナー膝)

腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)は膝の使い過ぎ(オーバーユース)障害のひとつです。症状は膝の外側の違和感からはじまり、重症化すると膝の曲げ伸ばしの度に痛むようになります。ランニングをすることで痛みが出て休むと楽になります。ランナーに多い障害ですが、その他にバスケットボール、自転車やスキーなどスポーツでもみられます。スポーツをしていない方でも脚をよく使う仕事をしている場合などに起こることがあります。

腸脛靭帯の図

原因は膝の曲げ伸ばしの繰り返しによって起こる摩擦です。腸脛靭帯とは足の付け根から太ももの外側を通り膝下の骨につながる膝の外側の安定を保つ役割をしています。この腸脛靭帯に張りがあり緊張している場合、膝の曲げ伸ばしの際に大腿骨(だいたいこつ)の外側にある外側上顆という突出部を乗り越える際に摩擦が起こり違和感や痛みに繋がります。急な下り坂を含むコースでのランニング、平たんでない場所でのランニング(雨水が両脇に流れるように中央部が高く両側が低くなっている道路など)で特に悪化します。

腸脛靭帯炎の症状が出ている場合、下り坂を含むランニングなど痛みを引き起こす活動は控えるようにします。鍼やマッサージを行い腸脛靭帯とそれに関連する太ももと股関節の筋肉の過度の緊張を改善します。この障害は鍼やマッサージによる筋や筋膜の緊張をとる方法が効果の出やすいスポーツ障害です。お悩みの方は是非ご相談ください。

膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝、膝蓋腱炎)

膝蓋靭帯炎(しつがいじんたいえん)は膝の使い過ぎ(オーバーユース)によっておこるスポーツ障害のひとつです。バスケットボールやバレーボールのようなジャンプを繰り返す動作の多いスポーツや、サッカーのように膝を使う動作の多いスポーツでよく起こります。症状は膝の前の痛みで、ジャンプ動作や軽く飛び跳ねるホッピング動作、陸上走り高跳びなどの走行時や短距離選手の瞬発力トレーニングの際のバウンティング動作で痛みが悪化します。

バスケットボールをする人達

膝蓋靭帯とは太ももの前にある「大腿四頭筋」(だいたいしとうきん)という大きな筋肉が足の付け根から下に向かって膝のお皿(膝蓋骨、しつがいこつ)を包むようにまたいで終わり、その先を繋いで膝のお皿からはじまり脛(すね)の骨の上部に付いている大きな腱です。組織としては靭帯ではなく筋肉の先にある腱ですが、大きく強靭な繊維の束であることと膝の関節を補強する役割を果たすところから膝蓋靭帯という名が使われています。ジャンプ時の動作や方向転換の時など膝の筋肉を使った際に衝撃がこの部分に加わります。膝蓋靭帯炎では膝のお皿の下端部や腱の真ん中が痛みます。最初は違和感を感じる程度ですが、次第に運動の際に痛みを感じるようになります。そのような状態になっても我慢して運動やトレーニングを続けていると、痛みが持続するようになり日常動作に支障が出ることもあります。

太腿の筋と膝蓋靭帯

このような膝蓋靭帯炎ですが、原因は腱に繰り返し負担をかけた結果修復が追い付かず慢性的に組織が損傷した状態にあることです。治療は膝蓋腱の傷めた部分の回復をはかるとともに、そこにつながる太ももの筋肉の余分な緊張をとり柔らかい状態にもっていきます。患部の痛みが強い場合は休養あるいは運動の強度を落とす、テーピングやサポーター及び運動姿勢の改善など膝蓋腱への負荷を減らすなどの方法も検討したほうが良いでしょう。膝蓋靭帯炎の方は比較的悪化してから来院することが多いです。悪化していると患部を触るのも少し痛みを伴いますし、慢性的に損傷状態にある膝蓋靭帯を治すのにある程度の期間がかかりますが、膝蓋靭帯炎はしっかりと治療すれば断裂でない限りほとんどが治るスポーツ障害ですので諦めないでできるだけ早めに治療開始することをおすすめします。

下腿や足関節および足指の症状

アキレス腱炎

走っている人

アキレス腱炎は走り過ぎ(オーバーユース)、ジャンプの繰り返しなどの原因によって、かかとの少し上にあるアキレス腱の損傷がおこり痛んでいる状態です。症状は歩くときや走るときの痛みや、階段の昇り降りの際の痛みです。ひどくなると朝起きた際にこわばりを感じたり、最初に足を床についたときに強い痛みを感じることもあります。かかとの少し上にあるアキレス腱を押さえると痛みがあったり、腫れて膨れていたりすることがあります。

人間が走っているときには、まず足を地面に着地するときには足首は外向きに倒れます。その次にしっかりと足に体重がかかっているときには足首は内向きに倒れます。走る動作はこの繰り返しですから、そのたびにアキレス腱が引っ張られてむち打ちのようなダメージをうけることになります。過度な運動を続けるとその分ダメージが大きくなりアキレス腱炎となる場合があります。もともと足首が傾いている(過回内、過回外)人はそのリスクが高くなります。ふくらはぎの筋肉が硬い場合もアキレス腱にかかる負荷が大きくなり痛めやすくなります。

アキレス腱炎の図

スポーツを頑張って強度の高い運動をしている方はアキレス腱の一部分が硬く大きく腫れていることがあります。腫れて強い痛みがある場合はその部分の修復が進み炎症がひくように促す必要があります。我慢してスポーツを続けるとアキレス腱のダメージが蓄積され症状が強くなってしまいます。練習をしていてアキレス腱に痛みを感じ、だんだんと痛みが強くなってくるような場合はできるだけ早めにご相談ください。

またアキレス腱炎に対しては一番痛む部分を治すだけではなく直接繋がっている腓腹筋とヒラメ筋という筋肉の緊張を柔らげることが大切です。アキレス腱炎に影響を及ぼす足首の傾きは、偏平足(足部のアーチ構造の低下)やハイアーチ(足裏の筋肉や足の甲の筋肉が緊張し甲高の足)が関係しています。ふくらはぎから足首、足の裏までの筋肉や腱、靭帯の状態をチェックして足のバランスを正常に戻していく必要があります。

足底筋膜炎

足底筋膜炎

足底筋膜炎(そくていきんまくえん)は足の裏の使い過ぎ(オーバーユース)障害です。症状は踵の裏から内側にかけてや、足の裏の真ん中に徐々に痛みが出ます。初期段階では朝に足を床についたときに痛みが生じることがあり、しばらく活動していると痛みが和らぎますが、活動後にまた痛みが悪化します。重症になると常に足に体重をかけるたびに痛みが生じ、活動をするとさらに悪化します。

足底筋膜炎の原因は、高い強度のランニングやダンスなど足首を最大限に底屈(ていくつ、下に曲げること)しながら同時に足の指の付け根を背屈(はいくつ、足の背中側に曲げること)する運動を繰り返し行ったことで、足の裏の筋膜に過剰な張力がかかることです。ウォーキングや長時間の立ち仕事などでも発症することがあります。偏平足(ローアーチ)や凹足(ハイアーチ)、足首の硬い人、硬い路面や床面での活動、足に合わないシューズを履いての活動は足の裏の張力を増すため、負傷の危険性が高くなります。

走行時の足底への負荷

足の裏の痛みを我慢していると姿勢や使い方のバランスが悪くなりほかの場所にも問題が出てくることがありますので、この症状には早めの対処をお勧めします。足の裏にある足底筋膜の硬く緊張した部分と、踵骨へくっついている部分の緊張をやわらげます。土踏まずをつくっている筋肉も同時にみていきます。また、筋膜は足の裏だけではなくふくらはぎなど全体につながっていますのでふくらはぎの緊張をやわらげることも大切です。足首の硬さをチェックして問題がある方は脛(すね)の前の筋肉や足の甲もみる必要があります。ストレッチやテーピングを併用することも効果的です。スポーツをしている方や立ち仕事など日常生活で使う方など、一度ご相談ください。

外反母趾

外反母趾説明

足の親指が中指の方に向かって歪んでしまい痛いというのが外反母趾です。重症では親指が完全に二番目の指に乗っかってしまうこともあります

この外反母趾ついつい折れ曲りの強い親指の付け根の関節に目がいってしまいがちですが、足首 から先全体(足部)とその足部とスネやふくらはぎをつないでいる筋肉にも注目しないといい効果は出せません。

足部アーチ

特に足の形はアーチ構造になっていてこれが壊れている人が外反母趾の患者さんによくみられます。 また、歩き方や靴紐の結び方も影響します。 私達は痛みを発している場所の治療と変形の原因や助長因子を探してその場所も治療、そしてアドバイスもしていきます。もちろん 軽傷の方が治りはいいです。「あれ? ちょっ とおかしいな」って感じたらすぐにご相談下さい。重症例では病院にて手術も治療の選択肢に入りますが、それは最終手段として置いておき、今、何ができるかを一緒に探しましょう。